住宅街にひっそり残る、不思議な建物
大阪府堺市美原区の住宅街の一角。パッと見、ちょっとした歴史ドラマのロケセット?と思うような渋い木造建築がぽつんと建っています。
瓦屋根に格子窓、落ち着いた色合いの外壁。まるで江戸時代の武家屋敷みたいなその建物、実は旧・黒山郵便局なんです。
今はもう使われていませんが、入口や窓口の構えをよく見ると、郵便局だった当時の面影がしっかりと残っています。どこか懐かしく、でも町並みの中に突然あらわれるその姿に、思わず「えっ、ここ郵便局やったん!?」と立ち止まってしまう人も多いはずです。
(撮影 2024.6)(執筆 2025.7)
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郵便と電話、ダブルで活躍してた時代
旧・黒山郵便局↑
この旧・黒山郵便局、実はそのルーツをたどると明治時代の1892年(明治25年)にさかのぼります。もともとは「平尾郵便局(五等)」として開設され、その後「黒山郵便局」と名前を変えながら、長らくこの地で郵便業務を担ってきました。
そしてただの郵便局やなかったんです。かつては電話の交換機まで置かれていて、地域の電話を手作業でつないでいた時代がありました。まだ家庭に黒電話が入ったばかりのころ、黒山地域の人たちの“声”は、ここを通って外とつながってたわけです。
その電話交換業務は1966年(昭和41年)で終了。以降は郵便専門の局舎として使われるようになり、地域の暮らしを支え続けました。
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旧局舎の営業終了は1976年
旧・黒山郵便局の窓口↑
この建物としての郵便業務が終わったのは、1976年(昭和51年)2月16日のこと。同じ日に新しい局舎へ移転し、名前も「美原郵便局」に改められました。
つまりこの木造の旧局舎は、黒山郵便局としての役割を終えてすでに半世紀近く経っているにもかかわらず、今もなお美原の町角に堂々と残されているのです。
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武家屋敷みたいな見た目と、しっかり残る“名残”
建物の外観は、ほんまに武家屋敷かと思うような佇まい。立派な瓦屋根に木製の格子、どっしりとした構えで、重厚感すら漂っています。
玄関横には、かつて郵便窓口だった場所の名残もくっきり。中に入ることはできませんが、外からでも「これはただの古民家ちゃうな」とわかる存在感です。
保存状態も悪くなく、まるで昭和がそのまま封じ込められた“タイムカプセル”のよう。建物の壁や窓枠には、当時この場所で手紙を出し、電話をかけた人々の気配が今も残っているように感じます。
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静かに町を見守る昭和の証人
いまでは郵便業務を終え、ただ静かにそこに佇むだけの旧・黒山郵便局。でもその姿は、かつてのにぎわいと地域の暮らしを映し出す、立派な“まちの証人”です。
美原区を歩いていてこの建物に出会えたら、ぜひ少し足を止めてみてください。何気ない町の一角に、こんなに深い歴史とロマンが詰まってるって、ちょっと得した気分になりますよ。
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『旧黒山郵便局』の場所
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